診療支援
治療

1 特発性肺線維症
idiopathic pulmonary fibrosis(IPF)
吾妻 安良太
(日本医科大学教授・呼吸器内科)

▼病因・病態・疫学

 日本ではIIPsが厚生労働省の指定難病とされている.有病率10.0人/10万人,発症率2.23人/10万人,平均年齢70歳,男性72.7%,喫煙歴67.6%(2008年 北海道調査)とされている.その約半数がIPFであり,最も予後不良である.基本は孤発例で,発症と増悪の危険因子〔喫煙,粉塵曝露,胃食道逆流(gastroesophageal reflux disease:GERD)〕に遺伝素因の関与が示唆される.

 発症は両側下肺,背側から内側,上肺に向かって進行するのが原則である.

▼症状・身体所見

 自覚症状は乾性咳嗽,労作時呼吸困難である.

 他覚所見は捻髪音(fine crackles)聴取(90%以上),ばち指(clubbed finger)(30~60%)を認め,進行すると倦怠,疲労,体重減少などを伴う.

 早期から労作に伴う低酸素血症が特徴であるが,呼吸不全の進行に伴い,二次性の肺高血圧症(pulmonary hypertension:PH)を併発し,低酸素所見がさらに助長する症例がある.

 IPFでは病初期からPHを合併することはまれで,肺の構造改変に伴ってPHが進行する〔Nice(ニース)分類Group 3〕.

▼診断・検査(表2-19)

血液生化学所見

 血清マーカーとして,シアル化糖鎖抗原KL-6,サーファクタントプロテイン(SP-D,SP-A)が高率に上昇するため,疾患の存在,病態のモニタリング,治療反応性の評価に有用とされている.乳酸脱水素酵素(LDH)も上昇するが,非特異的である.

 自己抗体測定は全身所見と合わせて膠原病の存在の鑑別に重要である(RF,ANAなど).一方,腫瘍マーカー(CEA,CA19-9,SLXなど)の測定は悪性腫瘍の鑑別に有用であるが,IPFでも軽度上昇することがあり,総合的な判断が必要である.

呼吸機能検査

 一般に肺の容

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