診療支援
治療

1 薬剤性肺臓炎
drug-induced pneumonitis
小倉 高志
(神奈川県立循環器呼吸器病センター・副院長)

疾患を疑うポイント

●すべての薬剤は,肺臓炎を発症する可能性がある.

●間質性肺炎の可能性がある場合は,常に薬剤性肺臓炎を優先的に鑑別してまず疑わしい薬剤(被疑薬)を中止する.

●中等度以上の重症度の場合は,副腎皮質ステロイドを投与.

学びのポイント

●薬剤の続行により重症化する可能性もある.救急現場を含めて,どの領域においても薬剤を使用する医師はこの疾患の存在を意識すべき.

●抗腫瘍薬,抗リウマチ薬の投与時には,薬剤性肺臓炎の危険因子である既存の間質性肺炎の存在などを確認すべきである.

●HRCTでDAD類似パターンの薬剤性肺臓炎については迅速にステロイド治療を開始する.

▼定義

 薬剤による肺毒性は,薬剤による薬剤性肺障害ともよばれる.特に代表的病型である間質性肺炎を薬剤性肺臓炎と定義する.

▼病態

‍ 細胞性障害性機序と,免疫反応による非細胞性障害性機序,基本的にこれらの2種類が考えられている.

細胞性障害性機序

 その発症には,急性期には活性化酸素の産生,白血球・単球の活性により急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)に類似した機序が考えられる.気道上皮細胞,Ⅱ型肺胞上皮細胞や血管内皮が薬剤により直接障害され,さらに慢性化して線維化も発症する.ブレオマイシンや,ブスルファンにみられるように投与量に依存して発症し,不可逆的な組織障害により慢性の経過をとることが知られている.

非細胞性障害性機序

 メトトレキサート,パクリタキセルなどは,投与量に依存せずに発症し,急性や亜急性の経過をとるといわれている.その機序としては,免疫系細胞の活性化が考えられている.

 さらに宿主因子として,遺伝性素因(薬剤代謝系遺伝子など),加齢,肺の先行病変(既存の肺線維症),併用薬剤との相互作用などが関係する.

 わが国の薬剤性間質性肺炎165例の

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