疾患を疑うポイント
●突然の呼吸困難出現時に鑑別すべき疾患の1つ.検査所見では,①低酸素血症,②右室負荷所見,③血液凝固能亢進の存在が重要.
学びのポイント
●死亡の50%は1日以内,80%は7日以内であり,早期診断,適切な重症度評価と迅速な治療が必要.
●突然の呼吸困難・胸痛の救急対応時に,APTEを鑑別診断にいれておくことが必要.
▼定義
塞栓子(血栓,脂肪,腫瘍など)が血流に乗って肺動脈を閉塞する病気.血栓が原因となることが多い.
▼病態
深部静脈血栓症(deep vein thrombosis:DVT)がAPTEの基礎疾患となる.主に下肢・骨盤内の静脈で形成された血栓(深部静脈血栓)がAPTEの発症につながる.APTEとDVTは1つの連続した病態としてとらえられており,静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)と総称されている.血栓形成の3大要因としては,Virchowが提唱した①血流の停滞,②血管内皮障害,③血液凝固能亢進が挙げられる.
▼疫学
日本における急性例および慢性例を含めた肺血栓塞栓症の発生頻度は欧米に比べ少ない.日本病理剖検輯報にみる病理解剖を基礎とした検討でも,その発生率は米国の約1/10と報告されている.しかし生活習慣の欧米化と高齢化に伴い増加している.
▼臨床分類と予後
血栓塞栓症の程度による臨床分類は予後に直結している(表2-33図).
心停止/循環虚脱,ショック/低血圧を起こしているAPTEは死亡率が高い.
▼診断
➊突然の呼吸困難,低酸素血症,頻呼吸
突然の呼吸困難,頻呼吸がAPTEを疑う所見である.狭心症様の胸痛は右室虚血に伴う症状と考えられている.血痰は肺梗塞の合併を示唆する.重症例は,失神,ショック,心肺停止に至る.原因不明の失神をみた場合はAPTEも疑う必要がある.DVTでは,片側下肢の腫脹・疼痛・赤紫色の色調変化が認められ
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