疾患を疑うポイント
●明らかな肺疾患(慢性閉塞性肺疾患,間質性肺疾患など),左心系疾患(虚血性心疾患,弁膜症などによる左心不全)などの存在がないのに,労作時呼吸困難が持続する場合にCTEPHを疑う.
学びのポイント
●治療としては,外科手術(PEA),BPA,薬物療法(肺血管拡張薬)が挙げられる.
▼定義
器質化した血栓により肺動脈が慢性的に閉塞(狭窄)を起こし,肺高血圧症を合併したもの.
▼病態
CTEPHには過去に急性肺血栓塞栓症を示唆する症状が認められる反復型と,明らかな症状のないまま病態の進行がみられる潜伏型がある.
血管閉塞の程度が肺高血圧症の成立要因として重要で,多くの症例では40%以上の血管閉塞を認めるが,肺血管の閉塞率と肺血管抵抗の相関は強くない.その理由として,閉塞率は胸部造影画像から比較的太い血管病変の閉塞を測定しているものの,画像所見ではとらえにくい肺血管病変がCTEPHの成立要因として関与していると考えられるためである.具体的には①肺動脈性肺高血圧症でみられるような亜区域レベルの弾性動脈での血栓性閉塞,②血栓を認めない部位の筋性動脈の血管病変などの病変の関与が示唆されている.日本人では欧米人とは異なった発症機序をもつことが示唆されており,わが国では女性に多く,深部静脈血栓症の頻度が低いため,血管炎がCTEPH発症に関与していると推定されている.
▼疫学
日本でCTEPHの難病指定を受けている患者数は3,439名(2017年度)である.
▼臨床分類と予後
比較的軽症のCTEPHでは,抗凝固療法を主体とする内科的治療のみで病態の進行を防ぐことが可能な例も存在する.しかし平均肺動脈圧が30mmHgを超える症例では,肺高血圧症は時間経過とともに悪化する場合も多く,一般には予後不良である.手術〔肺動脈血栓内膜摘除術(pulmonary endarterectomy:PEA)