疾患を疑うポイント
●呼吸困難とともにピンク色・泡沫状の痰がみられる.
●胸部X線で両肺に浸潤影またはすりガラス影がみられる.
学びのポイント
●肺水腫は肺血管外に液体が異常に貯留した状態のことであり,左心不全に伴う心原性肺水腫や炎症に伴う肺血管透過性亢進を特徴とする急性呼吸促迫症候群(ARDS)が代表的な病態である.
●臨床的には進行性の呼吸困難を特徴とし,胸部X線では両側性の陰影(多くは浸潤影)がみられる.
●ARDSの低酸素血症は酸素吸入のみでは改善が乏しく,陽圧換気が必要である.人工呼吸器の設定に当たっては,一回換気量を低く設定し,気道内圧を低く維持する肺保護的換気法が行われる.
▼定義
肺水腫は肺胞腔内や間質など肺血管外に液体が異常に貯留した状態のことである.
▼病態
微小肺血管を介する液体の移動は,以下のStarling(スターリング)の式で規定される.
Qf=Kf(ΔP-σΔπ)
Qf:血管外へ流出する体液量,Kf:ろ過係数,ΔP:微小血管内外の静水圧差,σ:蛋白質に対する反発係数,Δπ:微小血管内外の膠質浸透圧差
ここで静水圧は体液を微小血管外に押し出そうと働き,浸透圧は体液を血管内に保持しようとする.血管外の体液は主にリンパ系や気道を介して排出されるが,排出が追いつかないと肺血管外に液体が貯留し,肺水腫となる.初期には間質内への水分貯留(間質性肺水腫)が生じ,ついで肺胞腔内の液体貯留(肺胞性肺水腫)へと進展する.
▼分類
Starlingの式に基づく発症機序から,①静水圧性(非透過性),②透過性亢進型,③混合型に分類される.静水圧性肺水腫はΔPの上昇やΔπの低下によるもので,急性左心不全による心原性肺水腫が代表的である.一方,透過性亢進型肺水腫はKfの上昇やσの低下によるもので,急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome: