疾患を疑うポイント
●胸部X線写真で境界明瞭な結節影がみられ,胸部CTで結節影に連続する血管影が認められた場合に肺動静脈瘻を疑う.症状は,肺動静脈瘻の数や大きさによりさまざま.
学びのポイント
●胸部異常陰影で結節陰影を認めた場合,肺動静脈瘻を鑑別診断の1つとして考慮する.
▼定義
肺動静脈瘻は,肺動脈と肺静脈が肺内で異常短絡(シャント)をきたす血管異常である.
▼病態
遺伝性出血性毛細血管拡張症〔hereditary hemorrhagic telangiectasia:HHT,Rendu-Osler-Weber(ランデュ-オスラー-ウェーバー)病〕に合併することが多い.HHTは常染色体優性遺伝を示す遺伝性疾患で,鼻出血,舌・口腔粘膜・指・鼻の毛細血管拡張,内臓病変(胃腸毛細血管拡張,肺,肝,脳,脊髄動静脈瘻)を特徴とする.責任遺伝子としては,ENG,ALK1,SMAD4の3つが確認されている.多くは先天奇形であるが,外傷,肝硬変,住血吸虫症などに続発する報告もある.
臨床症状では,右左シャントにより,低酸素血症を伴う場合は労作時呼吸困難,チアノーゼ,ばち状指,多血症が代表的で,脳血栓塞栓症,脳膿瘍,細菌性心内膜炎を合併しやすい.肺動静脈瘻の破裂による喀血や血胸を伴うことがある.
▼疫学
比較的まれな疾患で,38人/10万人との報告がある.
▼分類
肺動静脈瘻は流入動脈が1本であるsimple typeと,2本以上あるcomplex typeに分類され,全体の95%以上がsimple typeである.また,病変数から単発性,多発性に分類される.肺動静脈瘻の約30%は単発性であるが,HHTに合併した肺動静脈瘻は多発性が多い.
▼診断
HHTの合併頻度が高いので,家族歴に注意し,繰り返す鼻出血,皮膚や口腔粘膜などの末梢血管拡張,他臓器の動静脈奇形も検索する.
吸気時に増強する血管雑音を聴取