疾患を疑うポイント
●胸痛や腹痛などを起こす器質的疾患がなく起こる,いわゆる心理的な過換気症候群の症状は,呼吸困難,しびれなどの症状とともに,呼吸器系,神経系,循環器系,精神科系,消化器系など各臓器にわたり多彩.
学びのポイント
●過換気を起こす病態は多くあり(表2-41図),その症状も多彩であるが,いわゆる心理的な過換気症候群は過換気を起こす器質的な疾患の除外後診断が下される.
▼定義
過換気とは代謝要求量(体内の二酸化炭素産生量)以上に過剰な肺胞換気を行い,動脈血PaCO2値が35mmHg未満に低下した状態.
▼病態
過換気(hyperventilation)は多くの病態でみられ,狭心症や気管支喘息軽症発作などの器質的疾患を除外した後,いわゆる心理的な過換気症候群とされる.呼吸の調節系には血中の酸素,二酸化炭素値によって調節を受ける化学調節と肺内の受容体などの神経調節のほかに大脳から行動調節がある.心理的な過換気症候群は主には行動調節の異常と考えられているが,その発症の病態生理は明らかでない点も多い.心因性のいわゆる過換気症候群は,何らかの精神的ストレスで過換気が始まり,呼吸性アルカローシスによる脳血流を含めた組織血流の減少,低リン酸血症などにより,手足のしびれ感,呼吸困難,めまい,失神,胸痛,テタニーなどさまざまな症状が出現する.このような症状のため,患者はさらに不安感が増し,深呼吸などのさらなる過換気を起こし症状が増悪する.なお,過換気症候群患者の症状と徴候には,低PaCO2血症によるものと,過大な呼吸や頻呼吸に対する神経系の反射的な反応や胸腔内圧の変動などによる機械的な反応に起因するものもあると考えられる.
▼疫学
頻度は報告によりさまざまであるが,全内科疾患の数%から5%という報告もある.
▼分類
過換気を引き起こす病態は多くある(表2-41図).
▼診断
臨床経過と既述の