疾患を疑うポイント
●COPDなどの慢性呼吸器疾患をもつ高齢者に多い.
●主たる症状は,慢性の労作時呼吸困難.
学びのポイント
●慢性呼吸器疾患が進行して重症化した際に共通して起こる病態として重要.
●呼吸不全に対する治療として,在宅酸素療法,換気補助療法,呼吸リハビリテーションなどがあり,同時に基礎疾患に対する十分な治療を行うことが大切.
●基礎疾患だけでなく,肺性心などさまざまな合併症をきたしうるため,これらの管理・治療も要する.
●気道感染症などを契機とした急性増悪を起こすことがあり,予後を不良にする.
▼定義
呼吸不全の状態(室内気吸入時の動脈血酸素分圧が60Torr以下となる呼吸障害)が少なくとも1か月以上続いた場合と定義される.
▼病態
呼吸不全が起こる成因としては,換気障害(肺胞低換気)と肺のガス交換障害(換気血流比不均等,肺拡散障害,右→左シャント)とがあり,このような障害をきたす慢性の基礎疾患によって,呼吸不全が持続した病態である.
慢性の経過であるため合併する病態も多く,肺高血圧・肺性心(慢性呼吸器疾患により肺高血圧をきたし,右室肥大や右室不全を生じた状態),呼吸筋疲労,中枢神経障害,消化管障害,肝障害,腎障害,栄養障害などをきたしうる.
呼吸器感染症や心不全などを契機として,安定期の治療の変更や追加を要するような病状の悪化をきたすことがある(急性増悪).
▼疫学
慢性呼吸不全に対する主たる治療法である在宅酸素療法は,わが国で16万人を超える患者に導入されており,その主たる基礎疾患はCOPDが最も多く,ついで間質性肺疾患,拘束性胸郭疾患(肺結核後遺症など),肺癌などである.
▼分類
呼吸不全の分類として,急性呼吸不全と慢性呼吸不全の2つの分類のほかに,動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2)が45Torr以下のⅠ型呼吸不全と,45Torrを超えるⅡ型呼吸不全とがある.Ⅱ型呼吸不全は