▼定義
肺胞微石症は,常染色体性劣性遺伝形式をとる稀少疾患であり,Ⅱb型ナトリウム依存性リン運搬遺伝子(SLC34A2)の機能喪失が原因である.世界で1,000例が報告されている.同胞発生が約半数.男女差はない.
個々の肺胞内にリン酸カルシウムを主成分とする微石が生じ,次第に肺胞壁に慢性炎症,線維化が生じる.小児期は無症状で,偶然の胸部X線写真で発見される.呼吸機能は長期間保たれるが,中年以降徐々に呼吸不全となる.
▼病態
微石の蓄積した肺は硬く重い.肺灰組織切片では,肺胞内に層状構造を有する微石が認められる(図2-65図).SLC34A2はⅡ型肺胞上皮細胞特異的に発現し,肺胞内からリンイオンを除去する.機能障害により,肺胞内リンイオン濃度が上昇,カルシウムと結合し,微石を生じる.病変は肺のみに出現する.
▼疫学
常染色体性劣性遺伝疾患であり,患者家系内にはしばしば近親婚が確認される.一般集団中の異常遺伝子頻度は低い.
▼分類
症例ごとに微妙な差異はあるが,基本的には単一の疾患と考えられる.
▼診断
少年期の健診で胸部異常陰影を指摘される例が多い.胸部X線写真でみられる著明なびまん性微細小粒状陰影は多数の微石陰影の合成像である.その特徴的な所見は吹雪様陰影(snow storm appearance),砂嵐様陰影(sand storm appearance)と称される(図2-66図).肋骨と胸膜直下の微石陰影の間が特に黒く見える(black pleural line).微石の大きさはCTの分解能を下回るため,微石は肺野濃度の上昇として観察される.胸膜下,小葉間隔壁,気管支血管束にそった石灰化,一部に濃厚な融合性石灰化を認める.
▼治療
根本的な治療はない.異所性石灰化の防止目的でエチドロン酸二ナトリウム薬が使用されるが効果は明白でない.慢性呼吸不全,肺性心への対症療法が主体となる.海
関連リンク
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