疾患を疑うポイント
●喫煙者や高齢者に多いが,非喫煙者,若年者の肺癌も増えている.
●特徴的な臨床症状や臨床検査所見はないものの,血痰が肺癌に多い.
●画像検査で疑うことになるが,典型例な結節・腫瘤陰影ばかりではない.
学びのポイント
●肺癌死亡数は男性で1位,女性で2位と悪性度の高い癌.喫煙はいまだに最大の原因ではあるが,非喫煙者の肺癌,とりわけ腺癌が増えている.
●ドライバー遺伝子変異肺癌に対する分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など,肺癌診療の進歩は著しく,適切な診断・治療が求められる.
▼定義
原発性肺癌は,気管支から細気管支・肺胞領域までの肺組織に由来する上皮性悪性腫瘍であり,肺癌の組織型は,その進行・転移スピードの違いから治療方針が異なるため小細胞肺癌と非小細胞肺癌に分けられる.非小細胞肺癌は主に腺癌,扁平上皮癌,大細胞癌に分けられ,原発性肺癌の約80%を占める.
▼病因
肺癌の多くは喫煙によって吸い込まれる発癌物質(carcinogen)と腫瘍プロモーター(tumor promoter)が原因となっている.その他の危険因子として職業性曝露,放射線被曝,呼吸器疾患の既往などが挙げられる.後述するドライバー遺伝子変異は非喫煙者に多く原因については明らかになっていない.
▼疫学
肺癌は現在日本人において癌の死因の第1位である.高齢化に伴って男女ともに増加傾向にあるが,高齢化の影響を除いた年齢調整死亡率では喫煙率の低下につれて男女とも減少傾向にある.年齢調整罹患率では男性が横ばい,女性が増加傾向である.
▼臨床像
➊腺癌の臨床像
腺癌は日本人で最も多い肺癌で全体の60%を占める.女性の70%以上が腺癌で,女性患者の多くは非喫煙者である.末梢型に属する.腺癌の一部にはすりガラス状陰影を主体とする病変があり,多発することもしばしば認められる.
➋扁平上皮癌の臨床像
喫煙との関連が強く男性