診療支援
治療

2 肺過誤腫
pulmonary hamartoma
佐々木 治一郎
(北里大学教授・新世紀医療開発センター)

▼定義

 過誤腫は非上皮性の腫瘍であり,肺以外の臓器にも発生する.組織学的には腫瘍の発生部位に存在する正常細胞・正常組織が異常に増殖し混在した像を呈する.肺過誤腫の場合,軟骨,脂肪,結合組織,筋(平滑筋)組織など正常気管支に存在する間葉系成分が,成熟した状態かつさまざまな比率で腫瘍内に混在する.

▼病態

 ほとんどは肺の末梢に発生するため,無症状で健診や他疾患のフォロー中に偶然発見されることが多い.10%程度に中枢型があり,気管支内腔に発育する場合は,咳,発熱(閉塞性肺炎)の症状を呈し発見動機となる.増殖スピードは遅く,切除例のほとんどは2cm以内である.

▼疫学

 日本胸部外科学会2012年集計では,421例が報告され,良性腫瘍切除例の約半分を占める.やや男性に多く,肺癌と比べて若年(30~60歳)に多い.明らかな人種差は報告されておらず,発生頻度も近年一定である.

▼分類

 腫瘍の存在部位により末梢型(90%)と中枢型(10%)に分類する場合がある.

▼診断

 末梢型の場合,画像(胸部単純X線画像・胸部CT肺野条件画像)所見においては,境界明瞭な結節影を呈す.その輪郭が分葉状であったりポップコーン様であったりするのは軟骨成分が不均等に発育するためと考えられており,過誤腫の特徴的画像所見である.確定診断は病理組織診断となるが,術前に診断されることはまれである.

▼治療

 悪性化はないと考えられており,増大スピードも遅いため,無症状の末梢型で過誤腫と臨床診断されているケースでは経過観察で問題ない.ほかの疾患と鑑別するためには,気管支内視鏡検査やCTガイド下の生検が行われることがあるが,治療もかねて外科的に切除される場合が多い.切除され本疾患と判明すれば後治療の必要はない.中枢型で症状を伴う場合あるいは今後症状が出現する可能性が高い場合は外科切除や気管支内視鏡を用いたインターベンション(レーザー焼

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