▼定義
原始生殖細胞(primordial germ cell)を起源とする腫瘍〔第7章の→も参照〕.
▼病態
胎生期の原始生殖細胞が,縦隔内に迷入して生じる腫瘍の総称である.原始生殖細胞由来の腫瘍は性腺(精巣,卵巣)に好発するが,思春期以降に発症する性腺外の胚細胞腫瘍の発生部位としては縦隔が最も頻度が高い.好発部位は前縦隔である.
▼疫学
疫学調査のほとんどが手術例のデータに基づいており,化学療法や化学放射線療法の適応となる.精上皮腫や奇形腫以外の非精上皮腫を含んだデータに基づいていない可能性を考慮する必要がある.手術例において,縦隔の胚細胞腫瘍で最も多いのは成熟奇形腫であり,若年に多く性差はない.
▼分類
性腺胚細胞腫瘍と同様に病理組織学的に分類する(表2-59図).治療を考慮するうえでは,良性の経過をたどる奇形腫と悪性であるそれ以外の胚細胞腫瘍(悪性胚細胞腫瘍)に分け,悪性胚細胞腫瘍は精上皮腫と非精上皮腫に分けて分類する.
▼診断
画像診断ではCT,MRIが有用である.腫瘍の内部構造には腫瘍ごとでの特徴があり,奇形腫では囊胞状の腫瘍で内部に粘液成分,脂肪成分,筋肉成分,骨成分を混在して認めることがある.悪性胚細胞腫瘍では充実性で周囲への浸潤傾向が強く,腫瘤内部に出血・壊死像を伴うことが多い.確定診断はCTガイド下生検など病理学的に行う.末梢血中のAFPやヒト絨毛性ゴナドトロピンβ-サブユニット(HCG-β)が診断や治療効果判定に有用である.
▼治療
奇形腫は外科切除,悪性胚細胞腫瘍では原則として性腺の胚細胞腫瘍の治療法に準じてブレオマイシン薬・エトポシド薬・シスプラチン薬の3剤併用化学療法を行う.精上皮腫は放射線治療の感受性も高く化学療法に放射線照射が追加される場合もある.非精上皮腫の場合化学療法に奏効しても腫瘍が残存する場合は追加的に外科切除が行われる場合もある.
▼予後
奇形
関連リンク
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