疾患を疑うポイント
●突然の胸痛と呼吸困難で発症.
●原発性自然気胸は20歳前後の長身,瘦せ型の男性に多い.
●続発性自然気胸はさまざまな呼吸器疾患に合併するため,高齢者に多い.しかし,女性では気胸を起こしやすい特徴的な基礎疾患があるため若年成人でも発症しうる.
学びのポイント
●気胸は胸腔に空気が貯留した状態であり,さまざまな原因疾患がある.
●重症度に応じて治療法は異なる.気漏が持続する場合には外科手術が必要.
●予後は良好であるが,緊張性気胸,両側同時気胸などの生命にかかわる特殊病態,再膨張性肺水腫という重篤な合併症が起こりうるため,注意が必要.
▼定義
気胸は,胸腔内に遊離空気が貯留した状態をさす言葉であり,病名ではない.したがって,さまざまな原因疾患がある.
▼分類
気胸は,その発症した契機が明らかではない自然気胸,外傷に伴って発生する外傷性気胸,医療行為に伴って発生する医原性気胸に分類される.さらに,自然気胸は,病因の不明な原発性自然気胸と,原因となる肺疾患があり発症する続発性自然気胸に分けられる.気胸を発症する基礎疾患はさまざまであるが,女性特有の基礎疾患としてリンパ脈管筋腫症(lymphangioleiomyomatosis:LAM)や胸腔内異所性子宮内膜症(月経随伴性気胸)がある(表2-64図).
▼病態
胸腔は常に大気圧より陰圧(-5~-8cm H2O程度)となっているため,胸腔のどこかに破綻が生じると空気が流入して肺は虚脱する.流入経路は,①肺表面の臓側胸膜の破綻,②壁側胸膜にまで及ぶ胸壁の損傷,③横隔膜の損傷のいずれかにより生じる.
原発性自然気胸では,胸膜直下のブラ・ブレブの破裂により肺から胸腔に空気が流入する.ブレブは,胸膜内弾性板が破綻して胸膜外弾性板との間に含気腔が生じた状態,ブラはブレブから進展して発生すると推測される胸膜直下の1cm以上の大きさの異常な含気腔