診療支援
治療

胸腔ドレナージ
瀬山 邦明
(順天堂大学大学院先任准教授・呼吸器内科学)

●胸水や気胸に対して胸腔ドレーンを挿入し,胸水あるいは空気を体外に排出(ドレナージ)する治療である.

◎胸腔ドレーンはどこから入れる?

●広背筋の側縁,大胸筋の側縁,脇窩基部,第5肋間上の水平線で囲まれる領域はtriangle of safetyとよばれ,この領域から胸腔ドレーンを挿入することが推奨される(図2-79).この領域では肋間筋のみで薄く,ほかの筋肉や乳腺組織への損傷を避けることができる.美容上も目立たず,特に第5~第6肋間中腋窩線であれば胸腔鏡手術が必要となった際にもポート孔として利用できる.胸腔ドレーンを挿入する際には肋間動脈を損傷しないよう肋骨上縁にそって挿入する.第2肋間鎖骨中線(乳頭線)上は,脱気を行うにはよいが,胸腔ドレーンの挿入には推奨されない.大胸筋が厚く出血しやすく,美容上の観点からも傷が目立つ.

◎どのくらいの太さのドレーンを使用する?

●ドレーンの太さは“フレンチ(Fr)”で示され,ドレーンの外周(Fr)=ドレーン外径×3.14(π),である.おおよそFrを3で割れば,太さ=直径になる.太いドレーンを使用するほど,刺入部の傷は大きく,痛みやドレーン感染などの合併症のリスクが高くなる.一般に,感染性胸水(膿胸など)や悪性胸水(癌性胸膜炎)ではフィブリンや膿がドレーン孔を閉塞しないように太いドレーンを入れたほうがよいといわれている.細径でも治療成績に影響せず,疼痛も少なく管理できるという研究成果があるが,一般的には太いドレーン(16~24Fr)が推奨されている.一方,気胸に対しては,必ずしも20~24Frのような太い胸腔ドレーンを使用する必要はない.排気の機能や疼痛の観点からも細径のドレーン(7~14Fr程度)でよい.

◎胸腔ドレナージシステムの原理

●胸腔は,生理的状態では閉鎖系で陰圧に保たれているため,胸腔ドレーンを挿入した後も胸腔の生理的状態を保つた

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