疾患を疑うポイント
●冠危険因子を複数有することが多い.
●陳旧性であるので無症状であることが多いが高齢者に多く慢性心不全の一因となる.
●心筋梗塞後の左室リモデリングによる慢性心不全症状や不整脈の症状を呈する.
●梗塞巣周囲に生存心筋の残存がある場合や冠動脈残存狭窄がある場合,狭心症や無症候性心筋虚血を生じる.
学びのポイント
●心筋梗塞による死亡は発症時に最も高く,時間の経過とともに死亡する危険性は減少するが,陳旧性心筋梗塞患者は心臓突然死を含む心事故発生高リスク群であり,その心事故予防は重要である.
●超高齢社会において心不全パンデミックが危惧されているが,心血管病の連鎖のなかにおいて陳旧性心筋梗塞は心不全の主要な一因であるため,その診断はきわめて重要である.
●一方,心筋梗塞発症から長時間経過すると症状が軽微であることが多く,診断が軽視,見逃されることもあり,後述の診断法を組み合わせ確実な診断を行う.
●治療においては,①病的左室リモデリングによる心不全や不整脈,心室瘤など心筋梗塞慢性期合併症に対する治療と②心筋梗塞再発予防に主眼をおく.
▼定義
心筋梗塞は発症からの時間の経過で予後,治療法,重症度が異なり,発症から1か月以上経過し心筋梗塞巣が線維化して病態が落ち着いた状態を陳旧性心筋梗塞と定義する.
▼病態
発症数週間の不安定な時期を切り抜け,心筋梗塞巣の線維化が完成した状態をいう.病理学的には心筋の壊死部は線維化巣として修復され,梗塞に陥った部分は収縮不全を生じ,梗塞巣が広範囲に及ぶと左室駆出率の低下から左心不全の原因となる.
梗塞巣が大きな場合には左室壁は薄くなり心室瘤を形成する.
これら組織修復の経過中,壊死心筋は線維化に伴い菲薄化し,この梗塞部の収縮能低下を補うため非梗塞部の代償性肥大・Frank-Starling(フランク-スターリング)機序に基づく左室拡大といった左室リモデ
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