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治療

2 心房細動
atrial fibrillation(AF)
池田 隆徳
(東邦大学大学院教授・循環器内科学)

▼定義

 正常P波が消失しきわめて迅速で多形態の心房波(細動波)を認め,RR間隔が不規則(バラバラ)になる不整脈である.頻脈となることが多いが,徐脈となることもある.

▼病態

‍ 高齢者に多い不整脈で,若年者では少ない.心房になんらかの原因で圧・容量負荷がかかると発現しやすい.具体的には,心不全,高血圧,弁膜症,心筋梗塞,心筋症,心膜炎,先天性心疾患など循環器疾患を有する場合である.貧血,脱水,感染(炎症),甲状腺機能亢進症,糖尿病,呼吸器疾患などの全身あるいは他疾患に伴っても生じやすい.

 一方,原疾患がなく孤立性に単独で生じることもある.不眠,過労,ストレスなどの精神的負担で自律神経のアンバランスをきたしている場合などである.自律神経については交感神経,副交感(迷走)神経のいずれが緊張しても発現しやすくなる.

 メカニズムはリエントリーである.肺静脈内から生じる群発性の自発興奮(心房期外収縮の連発)がトリガーとなって発生し,それが心房内で小さなリエントリーを形成し,分裂・融合・消失を繰り返しながら,心房内をさまよい無秩序に旋回することで維持される.

▼疫学

 罹患率は全人口比で1~1.5%であり,80歳以上では5~8%とさらに高率となる.心房細動は高齢者においてはありふれた不整脈である.

▼分類

 最も一般的な分類のしかたは,発作の持続時間と自然停止の有無によって分ける方法である.発症し7日以内に自然停止する場合は「発作性心房細動」,7日以上持続し自然停止しなければ「持続性心房細動」,除細動が不成功あるいは実施なされなかったことにより,永久的に持続すれば「永続性(慢性)心房細動」と分類する.基礎疾患の有無によって分類することもあり,この場合は孤立性(基礎心疾患なし),非弁膜症性(弁膜症なし)などのようによばれる.

▼症状

 脈の乱れ感を伴う動悸を自覚することが多い.しかし,無症状で経過し,健

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