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5 WPW(ウォルフ-パーキンソン-ホワイト)症候群
Wolff-Parkinson-White syndrome
池田 隆徳
(東邦大学大学院教授・循環器内科学)

▼定義

 心房と心室の境界部に副伝導路〔Kent(ケント)束〕が存在する症候群である.発作性上室頻拍をきたす.

▼病態

 先天性に房室間にKent束を有することが原因である(遺伝性ではない).Kent束の伝導性は房室結節に比べてきわめて速い.心臓内の器質的病態との関連性は薄いが,唯一,先天性心疾患であるEbstein(エブスタイン)奇形に合併しやすいことで知られている.房室結節との間でリエントリーを形成し,発作性上室頻拍(房室回帰性頻拍)をきたす.

▼疫学

 心電図上の罹患率は0.1~0.2%程度とされている.全例が発作性上室頻拍を呈するのではなく,無症候で経過することもある.

▼分類

 Kent束の存在する部位によって,A型(左側),B型(右側),C型(心中隔)に分けられ,A型,B型,C型の順で多い.Kent束を逆行性にのみ伝導しデルタ波を認めない場合を潜在性WPW症候群と称する.これに対して,通常のデルタ(Δ)波を認める場合を顕性WPW症候群と称する.

▼診断

 診断は心電図検査でなされる.健康診断などで偶然に発見されることが多い.

心電図所見

 心房興奮がKent束を介して心室に早期に達することでΔ波が認められ,PQ(PR)短縮とQRS幅延長を伴う(図3-28).V1誘導でA型はR波が幅広で高い右脚ブロック型,B型はS波が幅広で深い左脚ブロック型,C型は幅広のQS型を呈する.ただし,潜在性WPW症候群ではこのような変化はみられない.

▼治療

 頻拍発作を有する症例では治療を行う.カテーテルアブレーションが治療の中心である.

薬物治療

 発作性上室頻拍の治療に準じる.ただし,心房細動の発現が予想される症例では,房室結節の伝導抑制を示す薬物(β遮断薬と非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬)を予防目的で使用してはならない.その理由は,心房細動を併発すると房室結節の伝導が抑制されていることで心房の興奮波の

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