診療支援
治療

5 ブルガダ症候群
Brugada syndrome
清水 渉
(日本医科大学大学院大学院教授・循環器内科学)

▼定義

 12誘導心電図のV1,V2誘導で特徴的なST上昇を呈し,主に夜間睡眠中または安静時にVFを発症し突然死の原因となる疾患である.青壮年男性が夜間に突然死する「ポックリ病」の少なくとも一部に関与する.

▼病態

 ST上昇およびVFの機序としては,再分極異常説と脱分極異常説がある.再分極異常説は,右室流出路における心外膜細胞と心内膜細胞の貫壁性電位勾配がST上昇やVF発生に関与するとするものである.AP第1相notchには,直接的には一過性外向きK電流(Ito)が関与するが,notchに引き続くdomeの形成に関与するL型Ca電流や,第0相脱分極に関与するfast Na電流が二次的に影響する.このため,外向きのK電流が増加,または内向きのCa電流やNa電流が減少した場合に,心外膜細胞のみで認めるAP第1相notchがさらに深くなりdomeが消失する(loss of dome).心内膜細胞ではこのような変化は起こらないため,心外膜-心内膜細胞間で大きな電位勾配が生じ,ST部分が上昇する.さらに,このdomeの消失は心外膜細胞間で不均一に生じ,大きな再分極時間のバラツキが生じ,phase 2 reentryとよばれる一種のリフレクションが出現し,これがVF第1拍目のPVCの機序と考えられる.VFが持続するためには右室流出路だけでなく心室全体の脱分極(伝導)異常が必要であり,Brugada症候群の病態には再分極異常と脱分極異常の両者の関与が重要であると考えられる.

▼疫学

 VF初発の平均年齢は39~48歳で,男性に多く,アジア地域で頻度が高い.健診ベースの報告で,0.1mV以上のcoved型ST上昇を認める頻度は0.05~0.16%,0.2mV以上のcoved型ST上昇を認めるのは0.15%と報告されている.

▼診断

臨床診断

 Brugada症候群の診断は心電図による臨床診断であり,N

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