疾患を疑うポイント
●高齢者に多い.
●徐脈に伴う脳虚血症状,心不全症状,易疲労感が出現する.
●心房細動停止時に徐脈をきたす徐脈頻脈症候群は高齢者に多くみられ抗不整脈薬で助長される.
学びのポイント
●徐脈があるというだけで洞不全症候群とは診断できない.「徐脈に起因する脳虚血症状,心不全症状,易疲労感」が診断の根拠に必要である.
●発作性心房細動患者では心房細動停止時に著明な洞停止,洞性徐脈が生じることがある.これを徐脈頻脈症候群とよぶ.
●徐脈頻脈症候群は心房細動を抑制する目的で投与された抗不整脈薬によって助長される.
●洞不全症候群が非可逆的と判断された場合,ペースメーカ植込みの適応となる.
▼定義
洞性徐脈,洞停止,洞房ブロックなどによる徐脈が原因となり,失神,眼前暗黒感,めまいなどの脳虚血症状,もしくは呼吸困難,息切れなどの心不全症状,易疲労感を呈する状態である.
▼病態
加齢に伴う洞結節およびその周辺の心房筋の線維化が原因になる.
β遮断薬,Ca拮抗薬(ベラパミル,ジルチアゼム),ジギタリス製剤,Ⅰ群およびⅢ群抗不整脈薬によっても洞不全症候群が生じる.
アスリートには生理的な洞性徐脈が認められるが治療の対象にならない.
▼疫学
わが国におけるペースメーカの年間植込み症例は4万件弱である.ペースメーカを植込まれている洞不全症候群患者は数万人以上いると推定される.
▼分類
Rubenstein(ルーベンシュタイン)の分類がよく知られている(表3-18図).
▼診断
Holter(ホルター)心電図が診断に有用である.徐脈が原因となって脳虚血症状,心不全症状,易疲労感を生じていることを確認する.
▼治療
有症状の場合,ペースメーカ植込みの適応となる.症状が長期間の必要不可欠な薬剤投与(例えば冠攣縮狭心症に対するCa拮抗薬ジルチアゼムによって生じる洞性徐脈)による場合もペースメーカ植込みの適応と