疾患を疑うポイント
●高齢者に多い.
●徐脈に伴う脳虚血症状や心不全症状が出現する.
●心サルコイドーシス症の初発心病変として頻度が高い.
学びのポイント
●ペースメーカ植込みが必要になる房室ブロックと治療を要さない房室ブロックの病態の違いを理解する.
▼定義
心房から心室へ興奮が伝導していく過程において,房室結節から左右の脚に至るいずれかの部位で障害が生じ,興奮伝導が遅延もしくは途絶する現象である.
▼病態
加齢や基礎疾患に伴う房室結節および周辺組織の炎症,線維化,脂肪変性などが原因となる.このような房室ブロックは刺激伝導系の“器質的”障害によるもので重症度が高くペースメーカ治療を必要とすることが多い.
若年者やアスリートでは副交感神経機能が亢進しているために1度およびWenckebach(ウェンケバッハ)型2度房室ブロックがみられる.このような「機能的」な房室ブロックは治療を要さない.
▼疫学
ペースメーカを植込まれている房室ブロック患者は数万人以上いると推定される.
▼心電図上の分類(表3-19図)
➊1度房室ブロック
PR間隔が0.2秒を超えるがQRSが脱落することはない.
➋Wenckebach型2度房室ブロック
PR間隔が徐々に延長し,遂にはQRSの脱落をみる.
➌Mobitz(モビッツ)Ⅱ型2度房室ブロック
PR間隔の延長をみることなしにQRSが突然脱落する.
➍3度(完全)房室ブロック
心房と心室間の伝導がまったくない.
▼診断
Holter(ホルター)心電図が診断に有用である.房室ブロックの部位診断には臨床電気生理検査が行われる.
▼治療
徐脈による明らかな臨床症状(脳虚血症状,心不全症状)を有する2度,高度(後述)または3度房室ブロックは恒久式ペースメーカの適応である.高度または3度房室ブロックで,必要不可欠な薬剤によるものもペースメーカの適応となる.
▼予後
予後は基礎疾患に規定され