疾患を疑うポイント
●心電図での異常Q波,ST-T変化,陰性T波,左側胸部誘導の高電位などの異常所見.
●心エコー,MRIなどの画像診断にて非均等型の左室壁肥厚所見.
●HCMの家族歴.
学びのポイント
●閉塞性か非閉塞性かで治療法が全く異なる.閉塞性の場合は,薬物治療のみならず,圧較差を引き起こす原因である肥大心筋に対し,心筋菲薄化をもたらす経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)と外科的中隔心筋切除術を考慮する.
●若年突然死をきたす疾患.突然死の危険因子を有する症例には,植込み型除細動器を考慮する.
▼定義
①左室ないしは右室心筋の肥大と②心肥大に基づく左室拡張能低下を特徴とする疾患群.臨床的に,心エコー検査もしくは心臓MRIで15mm以上の最大左室壁厚(家族歴がある場合は13mm以上)で定義される.
▼病態
肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy:HCM)の約60%は家族歴を有し,そのうち約半数はサルコメアなど心筋の収縮蛋白の遺伝子変異により発症すると考えられている.サルコメア遺伝子変異は,構成する蛋白の欠損やアミノ酸配列の異常により,構造的障害やカルシウム感受性の亢進などを引き起こし,心筋肥大や線維化に関与する複数のシグナル伝達経路の活性化,ミトコンドリア機能異常を介して,心筋肥大,錯綜配列,間質の線維化を惹起し,心機能異常,特に拡張能異常や不整脈の発生につながる.
▼疫学
HCMの有病率は対象や調査により異なるが,1998年厚生省特定疾患特発性心筋症調査研究班報告にて人口10万人あたり17.3人と報告された.同研究では男女比は2.3:1と男性が多く,年齢では60歳代がピークであった.しかし,HCMは無症状で経過することも多く,真の有病率はもう少し高いと考えられている.
▼分類
HCMの病型は,その形態で分類されることが多い.
➊閉塞性肥大型心筋症(hypert
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