▼病態
サルコイドーシスは,肺,リンパ節,眼,皮膚,心臓,肝などに非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を形成する原因不明の炎症性疾患である.病変が心臓に及んでいる状態を心サルコイドーシスとよぶ.初期には,肉芽腫性炎症や間質浮腫の存在する部位に一致した心筋壁肥厚を認め,その後炎症が消褪し線維化する.心室中隔基部にはしばしば壁の菲薄化を生じる.刺激伝導系や心筋に炎症が波及し,房室ブロックや心室性不整脈,左室収縮不全を呈することがある.突然死の原因にもなりうることから,心病変の診断は重要である.
▼疫学
肺や眼病変で診断されることが多い.日本人のサルコイドーシスの有病率は人口10万人あたり0.3~1.7人であり,臨床的に心サルコイドーシスと診断されるのは約5%である.
▼診断
サルコイドーシスの診断基準は,組織診断群と臨床診断群からなる〔第2章「サルコイドーシス」の項の図2-34図参照〕.心臓で組織診断を得るには,心筋生検で非乾酪性類上皮細胞性肉芽腫を確認する必要があるが,その診断感度は高くない.臨床診断として,房室ブロック,心エコーにおける左室収縮不全や形態異常(心室瘤,心室壁肥厚,中隔菲薄化)は有用な所見である(図3-56図).ガリウムシンチ・FDG-PETにおける心筋への異常集積やガドリニウム造影MRIにおける心筋の遅延造影も有用な所見である(表3-26図).
▼治療
薬物治療としてステロイド投与が行われる.房室ブロックや心室頻拍を合併する例では,ステロイド投与後にこれらが改善する可能性はあるが確実ではなく,ペースメーカや植込み型除細動器も考慮する.左室収縮不全を合併する例では,ステロイド投与後に心機能が改善するかを観察し,あわせてβ遮断薬やACE阻害薬などの標準的心不全治療を行う.
▼予後
左室駆出率が30%以上であれば,ステロイド投与により心機能改善が見込めるが,30%未満では有意な改善が