疾患を疑うポイント
●小児~高齢者のいずれの年齢でも発症しうる.
●先行して感冒症状があり,安静時の前胸部痛,特に仰臥位で増強,前傾姿勢で軽減するのが特徴的である.
学びのポイント
●心膜の急性炎症によって起こる疾患であり,ウイルス性であると推定されるが,原因ウイルスを特定できないことが多い.
●上気道感染が先行することが多い.
●心電図では冠動脈の灌流域では説明しにくい広範なST上昇を伴うことが多い.心筋逸脱酵素の上昇を認める場合,心筋炎を合併している可能性がある.
●アスピリン薬薬やNSAIDsに反応する例が多いが,コルヒチン薬も初期治療に用いることが推奨されている.再発例では原因の特定が必要である.
▼定義
欧州心臓病学会(ESC)ガイドラインでは次の4項目のうち2項目以上を満たす場合,急性心膜炎と定義する.
●心膜炎性の胸痛(典型的には鋭い痛みで前傾姿勢で改善)
●心膜摩擦音〔表面を擦過する音,軋む音(squeaking sound),胸骨左縁でよく聞かれる〕
●新たに出現した広範なST上昇またはPR低下
●心囊液の貯留(新たな出現または増悪)
その他,指示する所見としては以下がある.
●炎症マーカーの高値(CRP,WBC,赤沈など)
●心膜の炎症を示す画像所見(CT,心臓MRIなど)
▼病態
合併症のない急性心膜炎の病態は心膜の急性炎症による.約15%の患者は心筋炎を合併する.
▼疫学
急性心膜炎は診断されない場合が多いので正確な発症率は不明である.剖検例の約1%に心膜炎が認められる.救急外来室に訪れる非虚血性の胸痛患者の5%は急性心膜炎である.
▼分類
およそ80~90%の患者では特定の原因が同定できず,特発性と診断される(表3-28図).特発性の多くはウイルス性であると推定されるが,原因ウイルスを特定できないことが多い.細菌性心膜炎患者は通常,重篤であり,心囊水,敗血症,肺炎などの症状が主な臨
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