1　僧帽弁狭窄症 | 医学書院_医療情報サービス

疾患を疑うポイント

●心尖部で聴取する拡張期雑音(拡張期ランブル)．

●幼少期を発展途上国で成育した人，高齢者，慢性腎不全患者などにみられる．

　僧帽弁口がなんらかの原因で狭小化し，左房から左室への血液の流入が障害される病態．

　狭小化は，僧帽弁の弁尖，弁輪，腱索，乳頭筋を含めた僧帽弁複合体(図3-65図)の器質的および機能的異常，左房粘液腫など異常構造物による僧帽弁口の機械的狭窄などが原因に挙げられる．

　左房から左室への流入が減ると左室から大動脈への拍出量が減少する．流入量を維持するために流入血流の駆動圧(driving pressure)となる左房圧が上昇し．左房は圧負荷のために拡大し，心不全に至る．

　リウマチ性と非リウマチ性に分類される．

　リウマチ性はリウマチ熱感染後の炎症性変化による僧帽弁複合体の器質的変化であり，僧帽弁交連部の癒合を認めることが多い．先進国では頻度が激減している．

　非リウマチ性で近年増加しているのは，高齢者や慢性腎不全患者などにみられる僧帽弁輪石灰化による僧帽弁狭窄である．石灰化による弁輪狭小化，弁尖への石灰化の波及による弁の可動性低下などを招く．リウマチ性と異なり僧帽弁交連部の癒合を認めない．

　特徴的な自覚症状はなく，重要なのは聴診と心エコー検査である．

➊自覚症状の確認

　特徴的症状はなく，僧帽弁狭窄症に基づく症状は，労作時息切れなどの心不全症状である．

➋身体所見

　僧帽弁顔貌(mitral face)とされる顔面頰部が出っ張り暗赤色を呈する顔貌は本疾患に特徴的とされていたが，最近はそのような患者に出くわすことは少ない．

　以下のような聴診所見が得られる．

●僧帽弁閉鎖音の増強によるⅠ音の増強

●硬化した僧帽弁が開く際の僧帽弁開放音(opening snap)

●心尖部にベル型聴診器を置くと聴取しやすい拡張期ランブル(diast