診療支援
治療

3 僧帽弁逸脱症候群
mitral valve prolapse syndrome
山本 一博
(鳥取大学教授・病態情報内科学)

疾患を疑うポイント

●心尖部で聴取する全収縮期雑音,あるいは収縮中期クリックとそれに続く収縮後期雑音.

学びのポイント

●器質的僧帽弁閉鎖不全の原因では最も頻度が高い.

▼定義

 収縮期に僧帽弁弁尖の一部あるいは全体が僧帽弁輪を越えて左房内に逸脱する.

▼病態

●臨床的な病態は僧帽弁閉鎖不全で,Carpentier Ⅱ型〔本章「僧帽弁閉鎖不全症」の図3-69を参照〕に該当.僧帽弁弁尖の粘液腫様変性(myxomatous degeneration),腱索の過長や断裂,乳頭筋断裂などが原因となる.

▼疫学

 軽症まで含むと一般住民の2~3%とされる.

▼分類

 術中の肉眼的所見で大きく2グループに分けられる.

diffuse myxomatous degeneration(Barlow syndrome)

 僧帽弁弁尖が全体的に粘液腫様変性による肥厚と延長を呈し,腱索も延長し,弁全体が左房側に落ち込み逸脱している.弁輪も拡大している.病歴が長く,若年から中年の患者が多いとされる.

fibroelastic deficiency

 細くなった腱索の断裂や延長によって逸脱を生じる.弁尖は変化に乏しい,あるいは薄くなっており,逸脱部のみ場合によっては肥厚がみられる.弁輪の拡大は著明ではない.高齢者に多く,病歴は短い.

 これら2つの病態が全く異なるものか,連続的なものか,明らかではない.

‍ 遺伝性結合組織疾患であるMarfan(マルファン)症候群,Ehlers-Danlos(エーラス-ダンロス)症候群,骨形成不全症などを原因とする僧帽弁複合体の器質的変化により僧帽弁逸脱を起こしている場合はsyndromic mitral valve prolapseと呼び,単独で僧帽弁逸脱を認めるnonsyndromic mitral valve prolapseと区別する.

▼診断

 僧帽弁閉鎖不全患者のなかで僧帽弁逸脱の有無

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