疾患を疑うポイント
●敗血症症状(高熱,頻脈,多呼吸)の出現,病原菌(大部分が細菌,ごくまれに真菌)の確認,疣腫をはじめとした感染に伴う心内構造の異常・破壊の出現.
●弁膜症(人工弁置換後を含む),先天性心疾患,人工ペースメーカなどのデバイス挿入を受けた患者,静脈注射による違法薬物使用者に好発.
学びのポイント
●感染性心内膜炎は発症率の高い疾患ではないが,発症した場合には,早期に診断し有効な治療を行わなければ多種の合併症が生じ死に至る.
●前項の基礎疾患を有する患者に多く発症する.
●感染性心内膜炎の約25%で観血的な歯科治療や外科手術など,誘因となる病歴が発熱以前に存在する.
●修正Duke(デューク)の診断基準に準拠して診断する.
▼定義
感染性心内膜炎は,弁膜・心内膜・大血管内膜に菌集簇を含む疣腫(vegetation)を形成し,菌血症・血管塞栓・心臓障害などの多彩な臨床症状を呈する全身性敗血症性疾患.以下,明記した場合を除き菌血症は細菌によるものとする.
▼病態
弁膜症や先天性心疾患に伴う心内異常血流の影響や,人工ペースメーカなどのデバイス挿入・人工弁置換術後などの異物の影響で生じた非細菌性血栓性心内膜炎(nonbacterial thrombotic endocarditis:NBTE)が発症に先行して存在する.非細菌性血栓性心内膜炎を有する例において,なんらかの原因により一過性の菌血症が生じたときに,非細菌性血栓性心内膜炎が生じている部位に細菌が付着し増殖して疣腫が形成される.
▼症状
感染性心内膜炎の臨床経過は起炎菌の種類に応じて多様であり,炎症所見が強く組織破壊が急速に進行して心不全が出現する症例もあれば,比較的慢性の経過をたどる症例もある.慢性例は,従来亜急性心内膜炎とよばれてきた.感染性心内膜炎の主な症状は,発熱(約90%),悪寒や震え(約50%)などの急性炎症に由来する