診療支援
治療

3 三尖弁閉鎖症
tricuspid atresia
石川 司朗
(福岡輝栄会病院・循環器内科)

▼定義

‍ 右房右室間の三尖弁口が完全に閉鎖した心疾患で,種々の程度で右室低形成を伴う(図3-94a)

▼病態

 発生学的には房室間の右方移動が障害され,心室中隔により三尖弁口が筋性閉鎖したと考えられる.PA/IVS同様,児の生存に心房間交通(PFO/ASD)が必須である.本疾患には心室中隔欠損,右室低形成,肺動脈狭窄または閉鎖,動脈管開存,大血管転位,大動脈弓異常(大動脈縮窄など),左上大静脈遺残,僧帽弁裂隙などの合併が多い.組み合わせにより,肺血流減少型(強いチアノーゼ)と肺血流増加型(チアノーゼは軽度で心不全・肺高血圧が高度で放置すれば肺血管閉塞性病変が進行する)の2群がある.

▼疫学

 先天性心疾患の3%以下で,男児にやや多い(55%).

▼分類

 Keith-Edwards分類がよく知られる.

▼診断

 生後1日よりチアノーゼおよび心雑音の聴取を50%以上の症例で認める.肺血流減少型肺血流増加型に分けて考える.前者は心室中隔欠損の狭小化,漏斗部狭窄の進行に伴いチアノーゼが増悪し,Fallot四徴症様の低酸素発作を呈する症例もある.後者のチアノーゼは目立たず,呼吸障害,肝腫大や体重増加不良といった心不全症状を示す.心室中隔欠損や肺動脈狭窄のあるタイプでは胸骨左縁に収縮期雑音を聴取する.肺動脈閉鎖例では一般的に心雑音は認めないが,動脈管開存に伴う連続性雑音を聴取する場合がある.

胸部X線

 心陰影は肺血流減少型では小さいか軽度拡大を,肺血流増加型では肺うっ血と心拡大を認める.心房間交通が狭小で右房が拡大すると,左2弓が目立つ.

心電図

 左軸偏位,左室肥大,右房負荷が特徴的とされるが,揃う例は多くない.

心エコー(図3-94b)

 心尖部四腔断面像で右房から右室への房室接合が閉鎖(多くは筋性閉鎖)し,心房間交通を認める.心房中隔は左房側へ凸型となる.三尖弁口筋性閉鎖では心房中隔と心室

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