診療支援
治療

2 悪性高血圧
malignant hypertension
大石 充
(鹿児島大学大学院教授・心臓血管・高血圧内科学)

疾患を疑うポイント

 最初に高血圧を指摘された時点の血圧が高いこと,降圧治療の中断,長期にわたる精神的・身体的負荷が発症に関与するといわれ,急激な腎機能低下と拡張期血圧の顕著な上昇が特徴である.

▼定義

 現在は加速型-悪性高血圧とよぶことが多い.拡張期血圧が120~130mmHg以上であり,腎機能障害が急速に進行し,放置すると全身症状が急激に悪化し,心不全,高血圧性脳症,脳出血などを発症する予後不良の病態.

▼病態

 長期の高度の高血圧による細動脈の内皮障害,血管壁への血漿成分の侵入に続くフィブリノイド壊死,増殖性内膜炎が病理学的特徴であり,腎の病理所見は悪性腎硬化症とよばれる.この病態では進行性の腎機能障害と昇圧の悪循環を生じる.眼底では網膜出血,軟性白斑,網膜浮腫や乳頭浮腫を認める.脳においては,血管障害によって血流の自動調節能が破綻し,脳浮腫が生じれば,高血圧性脳症となりうる.

▼疫学

 降圧療法の進歩により年々減少している.予後も,5年生存率が32.0%から91.0%まで著しく改善した.

▼分類

 従来は,乳頭浮腫を伴う悪性高血圧と,出血や滲出性病変のみを伴う加速型高血圧に分類していたが,最近は,加速型-悪性高血圧と呼んでいる.

▼診断

 悪化する頭痛,悪心・嘔吐,意識障害,けいれんなどを伴い,巣症状は比較的まれである.脳卒中では原則として緊急降圧が禁忌であるため,その除外は重要である.MRIでは頭頂~後頭葉の白質に血管性の浮腫の所見が認められることが多い.

▼治療

 多くは経口薬で治療目的が果たせるが,最初の24時間の降圧は拡張期血圧100~110mmHgまでにとどめたほうがよい.多くは圧利尿によって体液減少状態にあることや,本態性高血圧に起因する例や膠原病の腎クリーゼではRA系の亢進が病態形成に深く関与しているので,ACE阻害薬やARBが効果的であるが,少量から開始する.

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