診療支援
治療

1 本態性(体質性)低血圧
essential hypotension
甲斐 久史
(久留米大学医療センター教授・循環器内科)

疾患を疑うポイント

●明らかな原因を認めないが,易疲労感,倦怠感,脱力感,気分不良,頭重感,ふらつき,めまいなどの自覚症状がみられる.

●若年女性に多い.

▼定義

 明らかな原因・基礎疾患がなく,体位変化に影響されず,収縮期血圧が100mmHg未満である慢性的な低血圧を本態性低血圧と定義する.

▼病態

 低血圧の基本的病態は,全身の血液量分布の調節異常あるいは急性の循環血液量の減少である.静脈は動脈の約200倍の伸展性を有するため血液の大部分は低圧系に分布する.すなわち,全血液量のうち,全身の動脈・左心室といった高圧系に約15%,全身の静脈・右心房・右心室・肺動静脈・左心房といった低圧系に約85%が分布している.この分布比率は自律神経系により常時調整をうけ変動する.高圧系は動脈圧受容器反射,低圧系は心肺圧受容器反射によって神経制御される.前者は頸動脈洞および大動脈弓,後者は心肺および大静脈に存在する圧

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