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治療

大動脈瘤
aortic aneurysm
室原 豊明
(名古屋大学大学院教授・循環器内科学)

▼定義・分類

 大動脈の正常径としては,胸部が約3cm,腹部が約2cmとされている.大動脈瘤(aortic aneurysm)は「大動脈の一部の壁が,全周性または局所性に拡大もしくは突出した状態」と定義される.また直径が正常径の1.5倍を超えて拡大した場合にも「大動脈瘤」と称している.大動脈瘤の形状が全周性に拡大し紡錘状であれば紡錘状大動脈瘤,局所的に突出し拡張部に変曲点を有していれば囊状大動脈瘤と分類される.また上行大動脈根部が拡張したものは,大動脈弁輪拡張症と別称されている.

 瘤の存在部位により,上行大動脈から下行大動脈の横隔膜より上までのものが胸部大動脈瘤,腹部大動脈のものが腹部大動脈瘤,胸部から腹部大動脈に及ぶものが胸腹部大動脈瘤と分類される.

 瘤部の病理学的所見では正常の3層構造が破壊され,線維性組織が主体となっている.高血圧,喫煙,糖尿病,脂質異常症などが危険因子として知られており,マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)などの細胞外基質の分解酵素や炎症性サイトカインの関与が指摘されている.また近年では組織内に発生した活性酸素による組織破壊説も唱えられている.

 大動脈瘤の発生機序としては,血管壁の炎症が大きくかかわっていると考えられている.高血圧,喫煙,ストレス,脂質異常症,糖尿病,遺伝素因などのさまざまな要因が影響し,そこに炎症が加わると,血中の単球が組織へ浸潤してマクロファージとなり,さらに活性化されたマクロファージからはMMPなどの細胞外基質の分解酵素や炎症性サイトカインが産生放出され,血管壁の細胞外基質を分解することによって血管壁が脆弱となり,内圧に耐えきれなくなって瘤が形成されると考えられている.

▼診断

 一般に大動脈瘤は無症状のうちに進行する.比較的大きくなると,周囲臓器の圧迫による症状がみられる.胸部大動脈瘤では,顔面浮腫や胸痛・背部痛,大動脈弓部を

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