▼定義
「大動脈壁が中膜のレベルで2層に剝離し,動脈走行にそってある長さをもち2腔になった状態」で,大動脈壁内に血流もしくは血腫が存在する.大動脈解離におけるフラップは,通常1~数個の裂口をもつが,裂口が不明で真腔と偽腔の交通がみられない例も存在する.前者を偽腔開存型大動脈解離といい,後者を偽腔閉塞型大動脈解離という.
▼病態・分類
大動脈解離は,発症直後から動的な病態を呈する.また広範囲の血管に病変が伸展するため障害される部位により種々の病態を示す(図3-113図).血管の状態を,拡張,破裂,狭窄または閉塞と分け,さらに解離の生じている部位との組み合わせでとらえると,多様な病態を理解しやすい(表3-48図).
解離の範囲からみた分類には,Stanford分類とDeBakey分類がある(図3-114図).前者は入口部の位置にかかわらず,解離が上行大動脈に及んでいるか否かで,A型とB型に分けている.解離が上行大動脈に及んでいればA型,及んでいなければB型とする.一方DeBakey分類では,解離の範囲と入口部の位置によりⅠ型,Ⅱ型,Ⅲ型(a,b)と分類している.Ⅰ型:上行大動脈に裂口があり弓部大動脈より末梢にまで解離が及ぶもの.Ⅱ型:上行大動脈に解離が限局するもの.Ⅲ型:下行大動脈に裂口があるもの.亜分類として,Ⅲa型:腹部大動脈に解離が及ばないもの.Ⅲb型:腹部大動脈にまで解離が及ぶもの,とする.
治療方法や術式などを考慮するうえで,これらの分類は重要である.
▼疫学
10万人あたりの年間発症人数はおよそ3人前後といわれるが,近年増加傾向にある.剖検例からの推定では,大動脈解離の発症のピークは男女とも70歳代である.大動脈解離の発症は冬場に多く夏場に少ない.また,時間的には活動時間帯である日中が多い.
▼診断
急性大動脈解離を診断するには,まずは疑いをもつ.突然発症した激しい胸背部