▼病因
本疾患の病因は今なお不明である.タバコに対するアレルギー,慢性の反復外傷,抗リン脂質抗体や血清セロトニン,プロテインS欠乏などの血液凝固系の異常,血管のれん縮,ホルモン異常などが指摘されてきた.また明らかな地域性があることから感染症の関与も疑われてきた.近年,血管炎を起こす刺激要因として,ANCA,抗内皮細胞抗体(anti-endothelial cell antibodies:AECA)といった自己抗体の関与や,内皮細胞上の細胞接着因子やT細胞が関与する免疫応答による血管炎の可能性も報告されている.さらに最近では,歯周病菌の関与の可能性も指摘されている.
▼疫学
ASO患者が増加する一方,Buerger病の患者数は減少傾向である.2009年のBuerger病による難病指定患者のうち,臨床診断基準をすべて満たす患者は4,000例程度と推定される.30~40歳代で発症する患者が約70%を占め,男性が圧倒的に多く,ほぼすべてが喫煙者である.また本疾患はアジア,中近東,地中海地域といった亜熱帯や温帯地方に多く,明らかな地域性がある.
▼症候の診かた
➊問診
病期分類としてASOと同様にFontaine分類とRutherford分類が用いられる.Fontaineの分類に沿った問診が大事で,どのようなときに症状が起こるか(運動時か,安静時かなど),あるいは,症状が生じる部位などの病歴を聴取する.虚血性心疾患や脳血管障害,また動脈硬化症の危険因子である高血圧,糖尿病,脂質異常症などをもつ患者は基本的に除外される.一方,喫煙歴(受動喫煙を含む)は診断にほぼ必須である.
➋理学的所見
脈拍の触知が重要である.動脈の触知は,大腿動脈,膝窩動脈,足背動脈,そして,後脛骨動脈で行い,拍動の減弱や消失の有無のほか,thrill(振戦)や左右差の有無に注意して観察する.また,血管雑音(bruit)の
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