診療支援
治療

4 レイノー病
Raynaud disease
古森 公浩
(名古屋大学教授・血管外科学)

▼定義

 Raynaud病は器質的病変を認めないが,血管れん縮や拡張のために四肢の末端でさまざまな臨床症状を生じる動脈の機能性疾患である.寒冷時やストレスで発生し,指趾が蒼白,チアノーゼへと色調の変化を認め,時間とともにまたは温暖状態で元に復する一連の症状をRaynaud現象と称する.動脈のれん縮による血流の急激な低下で皮膚は蒼白となり,酸素化が十分に満たされていないためにチアノーゼを呈する.最終的には反応性充血によって赤色を呈する.時にしびれや痛みを伴い,重症例では虚血性潰瘍や壊死を呈するものも認められる.

▼病態生理

 一般人口の約3~5%にみられ,男性より女性に多く,高齢者より若年層で多くみられる.Raynaud現象は血管運動神経の異常興奮,血管の感受性亢進,血液粘着度の亢進により,発作前に小動脈のれん縮が起こることにより発症する.

▼分類

 背景疾患を認めない一次性Raynaud現象と背景疾患を有する二次性Raynaud現象(Raynaud症候群)に大別される.大半は一次性Raynaud現象で,二次性Raynaud現象の背景疾患は表3-54に示すように多岐にわたる.特に膠原病を背景に認めることが多いため,初診時には必ず膠原病の併存を念頭において検査を進める必要がある.

▼診断

 臨床症状からRaynaud現象と診断されるが,一次性か二次性かを鑑別するために,十分な問診による既往歴の検索や血沈・抗核抗体などの検索が必要である.特に喫煙歴,外傷,内服薬(抗がん剤,β遮断薬,エルゴタミン,経口避妊薬など),プラスチック産業従事(塩化ビニル接触)などについては十分な問診が必要である.なんらかの背景疾患が同定されれば二次性Raynaud現象(Raynaud症候群)とし,それ以外を一次性Raynaud現象(Raynaud病)とする.

 ドプラ血流計,指尖容積脈波による血流測定や冷水負荷試験を

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