▼定義・病態・疫学・分類
すべての原発性心臓腫瘍の1/3~1/2を占める.あらゆる年齢層にみられるが,好発年齢は30~50歳代で,約2/3が女性,10%が家族性である.好発部位は卵円窩付近であるが,家族性では,心室から発生するものもあり,再発率が高い.心腔内では左房が多い(左房83%,右房12.7%,両心房1.3%,左室1.7%,右室0.6%).Carney(カーニー)複合体は常染色体優性遺伝を示す家族性の症候群で,①粘液腫(心臓,皮膚,乳腺),②ほくろ,色素性母斑,③内分泌機能亢進[副腎機能亢進〔Cushing(クッシング)症候群〕,精巣腫瘍,下垂体腺腫,甲状腺腫など]を伴う.Carney複合体の粘液腫形成にPRKAR1A(regulatory subunit 1A of cAMP-dependent protein kinase A)およびMYH8(myosin heavy chain 8)の変異の関与が知られている.
▼診断
腫瘍の発生部位,大きさや可動性により,さまざまな非特異的症状を呈する.しかし,粘液腫の患者の多くは,閉塞性心症状,塞栓による症状,全身症状の古典的三徴のうち少なくとも1つを有する.三徴のうち最も多くみられる閉塞による症状には,めまい,呼吸困難,咳嗽,肺うっ血や心不全による症状が含まれる.
左房粘液腫では,僧帽弁口や肺静脈閉塞により肺静脈圧が上昇し肺高血圧や肺うっ血をきたし,呼吸困難,咳嗽,血痰,めまい,さらに,突然死をきたすこともある.症状は体位の変換により変化し,臥位により軽快することもある.僧帽弁口の狭窄をきたしている場合,身体所見は僧帽弁狭窄症と同様であるが,体位により変化することが特徴的である.Ⅰ音の増強と拡張期ランブルを心尖部に聴取することが多い.僧帽弁開放音に類似するtumor plopが聴かれることもある.
右房粘液腫では,左房粘液腫