診療支援
治療

3 転移性腫瘍
metastatic tumor
河野 浩章
(長崎大学大学院准教授・循環器内科学)
前村 浩二
(長崎大学大学院教授・循環器内科学)

▼定義・病態・疫学・分類

 頻度は,剖検例で1.7~14%(平均7.1%),一般住民で0.7~3.5%(平均2.3%)と報告されている.転移性心臓腫瘍の頻度は以前の報告より増加しつつあるが,主に画像診断の進歩によると思われる.心臓への転移様式は,直接浸潤,血行性およびリンパ行性転移や下大静脈からの心内腔への進展による.心膜転移が最も多く,心筋,心内膜の順となる.心膜転移は,乳癌や肺癌を含む胸部癌の直接浸潤が多い.腹部および骨盤内腫瘍も,下大静脈から右房に到達しうる.原腫瘍の頻度はまれであるが心臓へ高頻度に転移するのが悪性黒色腫である.原発巣は,全体としては肺癌が最も多く,ついで乳癌,造血器腫瘍の順である.男性では,肺癌の次に食道癌とリンパ腫が多いが,女性はリンパ腫,乳癌と続く.症状は,腫瘍の部位によりさまざまであり,呼吸困難,動悸,意識消失,胸痛,浮腫などを生じる.心タンポナーデの頻度は高く,ほかに心不全,不整脈,刺激伝導障害,急性心筋梗塞,心破裂,全身性塞栓,上大静脈(superior vena cava:SVC)症候群などを生じる.

▼診断

 癌患者で,明らかな症状がなくても,新たに心雑音が生じたり,心電図変化や胸部X線上心拡大を認めた場合は転移性心臓腫瘍を疑うべきである.典型的な心電図変化として,ST-T変化,心房細動や心房粗動,有意な心膜液貯留を示唆する所見として低電位や電気的交互脈がみられる.心筋虚血の心電図所見は,腫瘍の冠動脈浸潤を示唆する場合もある.心エコーは腫瘍の部位診断,心囊液貯留や心タンポナーデの診断に有用である.CT,MRIも病変の特徴や,腫瘍の範囲,周辺臓器から心臓への直接浸潤の有無や,原発巣の診断に有用である.PET/CTは全身を検索することができ,原発巣の検出に有用である.

▼治療・予後

 50%以上が1年以内に死亡するというように予後が不良であるため,通

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