診療支援
治療

CABG
下川 宏明
(東北大学大学院教授・循環器内科学)

◎概念と適応

●冠血行再建の1つである冠動脈バイパス術(coronary artery bypass grafting:CABG)は,虚血となっている責任冠動脈へ自己の代用血管(バイパスグラフト)を吻合し,新しい血流を確保する手術である.

●一般的な適応は,冠動脈造影上75%以上の狭窄があり,その灌流域の心筋虚血に対し手術効果が大きく,手術の危険性が少ない場合とされる.

●標的となる冠動脈の内径は1~3mmであり,代表的なグラフト血管には,動脈グラフトとして,内胸動脈,橈骨動脈,胃大網動脈があり,静脈グラフトとして,大伏在静脈がある.

◎OPCAB

●以前,CABGは繊細な吻合を安定して行うために人工心肺を装着し,心停止下に行われてきた.しかし,近年高齢化が進み,脳血管病変,腎機能障害,大動脈の石灰化病変などを有する人工心肺装着リスクが大きい症例が増加し,人工心肺を使用せずに心拍動下にCABGを行う必要が生じてきた.

●人工心肺を使用せずに心拍動下に吻合を行うCABG(非体外循環下冠動脈バイパス術.off-pump coronary artery bypass grafting:OPCAB)は1990年代後半に表的冠動脈を吸いつけて固定する吸引型スタビライザーが登場したことと,心臓の下壁や側壁といった心臓裏面を,循環を安定させたまま露出する技術が確立したことから急速に普及し,現在わが国のCABGの半数以上がOPCABで実施され,手術成績も良好である.

◎CABGとPCI

●PCIは局所の冠動脈病変(狭窄や閉塞)をターゲットにする局所療法であり,狭窄を解除して冠血流を増加させる.一方,CABGは冠動脈病変の遠位側の冠動脈を灌流することで,心筋血流を増加させる.

●CABGの有するPCIとの大きな利点は,「今ある虚血解除」効果に加えて「将来の冠動脈イベント予防」効果を併せもつことである.

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