診療支援
治療

心エコー
斎藤 能彦
(奈良県立医科大学教授・循環器内科)

●心エコー検査は,心不全の診療においてきわめて重要な検査である.心エコー法により,心臓内の左心室径,左房径,左心室容積,左房容積,壁厚などの心臓のサイズの計測,心機能の評価,血行動態の評価,心不全の原因診断,重症度および治療効果判定などにも有用である.現在,心不全を左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)が40%未満に低下した心不全(heart failure with reduced EF:HFrEF)とLVEFが50%以上に保たれた心不全(HF with preserved EF:HFpEF),その中間のLVEFが40%以上で50%未満をHF with midrange EF:HFmrEF)と分類しており,このLVEFは臨床的には心エコー法で求められたEFを用いている.

◎心機能評価指標

●左室収縮機能指標として,その簡便性よりLVEFが用いられる.その他,1回拍出量(mL/回),心拍出量(L/分)などでも求めることができる.

●左室拡張機能評価は,左室拡張機能が低下すると左室拡張期時定数が低下した左房圧が上昇するが,エコーでこれらに相関する指標が提唱されている.

 E/A:左室流入血流速波形で観察される,拡張早期の流入速波形E波と心房収縮期の流入速波形A波の比.

 e':僧帽弁輪部運動を組織ドプラ法で観察したときの拡張早期のe'波は,左室弛緩時定数(Tau)と比例する.

 E/e':左室流入血流波形のE波と僧帽弁輪部速度波形のe'波のピーク速度の比であるE/e'はLVEFの影響を受けずに左房圧と相関する.拡張機能が低下すると左房容積が増加することにより左房容積係数も指標となる.

●大動脈弁や,僧帽弁の形態異常,狭窄症や閉鎖不全症の存在と重症度を形態とドプラより測定できる.

◎右室機能評価

●右室機能は心不全の予後を決定する重要な因子で

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