診療支援
治療

2 びまん性食道けいれん
diffuse esophageal spasm
千葉 俊美
(岩手医科大学教授・関連医学分野)

▼定義

 正常な蠕動運動はあるものの,時に持続性の同期性収縮が起こる病態であり,嚥下困難および間欠性胸骨下痛を主症状とする.

▼病態

 通常は正常な食道蠕動波を呈するが,時に持続・反復する異常収縮波を特徴とする.食道縦走筋と粘膜筋板の肥厚がみられ,筋層間神経叢の炎症性細胞浸潤を認めるが特異的所見には乏しいとされる.

▼疫学

 年間10万人あたり0.2人の発症とされている.40~60歳の女性に多いとされ,アカラシアに進展する例も3~5%とされる.

▼分類

 HRMの食道内圧所見では,integrated relaxation pressure(IRP)が正常範囲内でLESの弛緩不全は認められず,2回以上反復する同期性収縮(DL短縮)が水嚥下に伴う収縮運動の20%以上で認められること,間欠的な正常蠕動波が認められることが必須項目である.

▼診断

びまん性食道けいれんの症状

 嚥下困難,胸痛,上腹部痛を高頻度に認め,疼痛は背部,頸部,上腕に放散する激痛であり,非心臓性胸痛(non-cardiac chest pain:NCCP)との鑑別を要するが,食事と疼痛の関連をおよそ半数に認める.

食道造影検査

‍ コルクスクリュー状(らせん状,数珠玉状)の所見が認められる.しかし,通常は正常蠕動波を示すため異常所見を認めないこともある(図4-6)

上部消化管内視鏡検査

 食道にいくつかの輪状収縮が認められることがある.

食道内圧測定検査

 同期性収縮が水嚥下に伴う収縮運動の20%以上で認められることが,びまん性食道けいれんの必須項目であり,さらに,2回以上の反復性収縮,振幅または蠕動波高の上昇,自発性収縮,下部食道括約筋(lower esophageal sphincter:LES)の不完全弛緩が付記項目である.

 これらの所見は正常な食道蠕動運動を示している場合には認められない.

▼治療

 原因不明であるた

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?