▼定義
「臨床・病理 食道癌取扱い規約 第11版」によると,Barrett(バレット)食道はBarrett粘膜(胃から連続性に食道に伸びる円柱上皮で,腸上皮化生の有無を問わない)の存在する食道と定義されている.
▼診断
扁平上皮と円柱上皮の境界(squamo-columnar junction:SCJ)から食道胃接合部までの円柱上皮を内視鏡的にはBarrett粘膜とする.食道胃接合部の同定は内視鏡による診断を優先とし,食道下部の柵状血管の下端,柵状血管が同定できない場合は胃の縦走ひだの口側終末部とする(図4-8図).
▼分類
全周性に3cm以上Barrett粘膜を認める場合をlong segment Barrett's esophagus(LSBE),Barrett粘膜の一部が3cm未満であるか,または非全周性のものをshort segment Barrett's esophagus(SSBE)とよぶ.
わが国ではほとんどがSSBEであり,LSBEの頻度は1%以下とされている.
▼病態・症状
重層扁平上皮は逆流する胃酸や十二指腸液に対して弱いため,繰り返す逆流により傷害された粘膜欠損部が修復する過程で円柱上皮化することで発生すると考えられている.
逆流による症状がみられるが,軽度のものが多く,無症状の患者も多い.臨床的な問題点としては,食道腺癌の発生であり,欧米における年間発癌リスクは0.12~0.6%程度と報告されている.Barrett上皮が長いこと,男性,高齢者,喫煙者,肥満者,慢性的なGERD症状などが発癌リスクとして挙げられている〔本章「バレット食道癌」の項(→)も参照〕.
▼治療
腺癌リスクとなるBarrett粘膜を消失させる目的で,粘膜内癌や異型病変を内視鏡切除後に,残存Barrett粘膜をラジオ波やアルゴンプラズマなどを用いて焼灼する方法や凍結凝固療法などが欧米を中心