診療支援
治療

(1)食道扁平上皮癌
esophageal squamous cell carcinoma
清水 勇一
(北海道大学病院診療教授・光学医療診療部)

疾患を疑うポイント

●中高年男性に多い.

●多量飲酒,喫煙者に多い.

●進行癌では食事のつかえ感が主な症状である.

学びのポイント

●男女比は約6:1であり,圧倒的に男性が多い.日本人の食道悪性腫瘍の90%以上を占める.

●進行癌は転移をきたしやすく,消化管癌のなかで最も予後が悪いが,消化器内視鏡検査にて早期発見されれば内視鏡的切除にて低侵襲に根治が可能である.

●進行癌に対する治療として,外科手術の他に化学放射線療法があり,奏効が望める.

●飲酒喫煙が発症リスクであり,また,頭頸部癌の合併率が高い.

▼定義

 食道粘膜は角化のない重層扁平上皮で覆われており,ここから発生した癌を食道扁平上皮癌という.粘膜上皮基底層から発生し,発育進展するとされている.

▼病態

 食道は長さ約25cmの内腔の狭い管腔臓器であり,癌が進行し増大すると,容易に狭窄症状を呈する.食道は口側より,頸部食道,胸部食道,腹部食道に分類されるが,食道癌の80%以上は胸部食道に発生する.胸部食道はさらに胸部上部,胸部中部,胸部下部食道に分類されるが,食道癌全体の40~50%は胸部中部食道に発生する.食道周囲にはリンパ節が豊富であり,ほかの消化管癌よりもリンパ節転移をきたしやすい

 食道癌の症状は,嚥下時の前胸部違和感やしみる感じから始まり,食事のつかえ感,体重減少,さらに嗄声や難治性の咳嗽がある.これらの症状は進行癌にならないと出ることは少ない.表在癌で症状が出ることは少ないが,病変範囲が広い場合,食べ物がしみる感じを自覚することがある.食事のつかえ感は進行食道癌の典型的な症状であり,最終的には流動物も通らなくなる.上縦隔の反回神経周囲のリンパ節に転移することが多く,転移リンパ節,もしくは癌の直接浸潤で反回神経が障害されると嗄声をきたす.食道は気管,左主気管支と接しているために,食道癌が進行すると容易に気道系に浸潤し,食道気管瘻を

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