診療支援
治療

2 食道良性狭窄
esophageal benign stricture
磯本 一
(鳥取大学教授・機能病態内科学)

▼定義

 食道の先天性,またはなんらかの後天的原因によって狭窄が起こるもので,ほとんどの場合通過障害を伴う.先天性食道狭窄はきわめてまれであり,乳幼児期に発症する.食道良性狭窄は,患者のQOLを低減させるため,成因や病態に応じた治療が必要である.

▼病態・分類

 機能的狭窄をきたす疾患は,アカラシア,びまん性食道けいれん,ナッツクラッカー食道(nutcracker esophagus)などがある.

 器質的狭窄をきたす良性疾患として,逆流性食道炎の重症型や長期経過例,腐食性食道炎が挙げられる.酸,アルカリ,重金属塩の飲用により,壊死を伴う強度の食道損傷に引き続き,広範囲の瘢痕狭窄をきたす.その他に,結核,梅毒,放線菌,ジフテリアによる食道炎,食道真菌症,放射線性食道炎,全身性疾患のCrohn(クローン)病やBehçet(ベーチェット)病の食道病変などでも狭窄をきたす.食道ウェッブ(web)は,Plummer-Vinson(プランマー-ヴィンソン)症候群にみられる頸部食道の膜様狭窄である.

 日常臨床では,治療に伴う術後狭窄が最も多い.外科的吻合術後狭窄や,表在性食道腫瘍に対する広範囲の内視鏡的粘膜下層剝離術後(endoscopic submucosal dissection:ESD)に高頻度に狭窄が生じる.食道静脈瘤に対する内視鏡治療硬化療法や結紮術でもまれに狭窄を起こす.

▼症候

 主な症状は,食物の通過障害と嚥下困難である.腐食性食道炎では激しい胸部痛を起こし,呼吸困難,吐・下血,穿孔,ショック状態になることもある.この急性期後に瘢痕狭窄が起こる.

▼診断

 病歴聴取,X線造影検査,内視鏡検査を行って診断するが,生検により悪性疾患と鑑別する.

▼治療

 良性狭窄に対しては,内視鏡的バルーン拡張術やブジーを行い,原因となる基礎疾患に応じた加療も行う.難治性狭窄や長い狭窄に対しては,ステント留置

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