▼定義・疫学・診断
十二指腸に発生する憩室は,発生頻度が10~20%と非常に高く,加齢とともに増加し,スクリーニングの上部消化管X線検査や内視鏡検査でしばしば遭遇する所見である.好発部位は,十二指腸下行部で,特にVater(ファーター)乳頭近傍に多く,これらは,傍乳頭憩室とよばれる.
▼病態
十二指腸憩室は,ほとんどが,壁の筋層を欠く仮性憩室であるため,壁は菲薄化している.傍乳頭憩室以外の十二指腸憩室は,臨床症状をきたすことは少なく大部分無症状である.一方,傍乳頭憩室では,Vater乳頭に開口する膵管,胆管の通過障害に伴う膵炎,胆管炎をきたすことがある.特に,憩室内に貯留した食物塊によって,胆管,膵管が圧迫され,上腹部症状と膵炎,胆管炎をきたすことが知られており,Lemmel(レンメル)症候群といわれている.その他の十二指腸憩室は,憩室炎をきたすことは少ないが,時に憩室出血をきたすことがある