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治療

(2)十二指腸憩室
duodenal diverticulum
飯島 克則
(秋田大学教授・消化器内科・神経内科)

▼定義・疫学・診断

 十二指腸に発生する憩室は,発生頻度が10~20%と非常に高く,加齢とともに増加し,スクリーニングの上部消化管X線検査や内視鏡検査でしばしば遭遇する所見である.好発部位は,十二指腸下行部で,特にVater(ファーター)乳頭近傍に多く,これらは,傍乳頭憩室とよばれる.

▼病態

 十二指腸憩室は,ほとんどが,壁の筋層を欠く仮性憩室であるため,壁は菲薄化している.傍乳頭憩室以外の十二指腸憩室は,臨床症状をきたすことは少なく大部分無症状である.一方,傍乳頭憩室では,Vater乳頭に開口する膵管,胆管の通過障害に伴う膵炎,胆管炎をきたすことがある.特に,憩室内に貯留した食物塊によって,胆管,膵管が圧迫され,上腹部症状と膵炎,胆管炎をきたすことが知られており,Lemmel(レンメル)症候群といわれている.その他の十二指腸憩室は,憩室炎をきたすことは少ないが,時に憩室出血をきたすことがある.

▼治療・予後

 Lemmel症候群では,内視鏡的に憩室腔から食物塊を除去することで,閉塞機転が解除され,病状は寛解する.十二指腸憩室出血に対しては,内視鏡的止血処置が適応であり,止血困難症例では,経カテーテル的動脈塞栓術が試みられる.いずれの場合も憩室そのものは残存するため,Lemmel症候群,出血は再発をきたすことがあり,再発を繰り返すような場合は,外科的処置が考慮される.十二指腸憩室に対する内視鏡的処置では,憩室壁が薄く穿孔のリスクがあること,および傍乳頭憩室では乳頭に処置の影響が及ぶと膵炎を誘発する危険があることに注意を要する.また,傍乳頭憩室では,憩室形成に伴い,膵管,胆管の開口部付近の解剖学的走行が変化し,内視鏡的逆行性胆管膵管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography:ERCP)時のカニューレーションが困難となる場合がある

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