診療支援
治療

(1)急性胃粘膜病変
acute gastric mucosal lesion(AGML)
坂田 資尚
(佐賀大学特定講師・消化器内科)
岩切 龍一
(長晴会木下医院)

疾患を疑うポイント

●急激な上腹部痛,悪心で発症し,時に嘔吐,吐血がみられる.

●NSAIDsの内服や身体的・精神的ストレス環境下にある.

学びのポイント

●高齢社会に伴い使用頻度が増し,多くの市販医薬品(感冒薬など)にも含まれているNSAIDsがAGMLの発生要因として最多である.

●高齢者や喫煙者,基礎疾患(動脈硬化,糖尿病,腎不全,肝硬変など)を有する場合にAGMLを発症しやすくなる.

▼定義

 急激な上腹部症状とともに,内視鏡検査で多発性のびらんや潰瘍などの胃粘膜所見を認める疾患.

▼病態

 成因は薬剤やアルコール,ストレスなど多岐にわたる(表4-3).NSAIDsはシクロオキシゲナーゼ活性阻害によりプロスタグランジン(PG)の産生を抑制し,PGによる胃粘膜防御機構を障害する.アスピリンは,胃酸によって脂溶性となり,細胞膜を通過し直接細胞傷害をきたす.副腎皮質ステロイドでは胃酸分泌の亢進,粘液分泌

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