診療支援
治療

2 胃癌
gastric cancer
八尾 建史
(福岡大学筑紫病院教授・内視鏡部)

疾患を疑うポイント

Helicobacter pylori(H. pylori)陽性者で慢性萎縮性胃炎を有すると胃癌のハイリスクである.

●早期診断のために,症状の有無にかかわらず,胃内視鏡検査やX線検査を行うことが重要.

学びのポイント

●早期胃癌に特徴的な画像所見(内視鏡・X線)について習熟する.

▼定義・概念

 胃癌は,胃粘膜上皮から発生する悪性上皮性腫瘍である.悪性腫瘍は,無処置のまま放置すれば,局所で浸潤性・破壊性に無限の増殖を続け,遠隔部位に転移する能力を有して,究極的に人を死に至らしめるものである.通常型の胃癌は,H. pyloriの持続感染による慢性胃炎を発生母地とする腺癌である.胃癌は,2018年時点で世界で第5番目に多い癌であり,世界の癌死の原因としては第3位に位置付けられる.わが国では,2017年における胃癌の死亡率は,男性では肺癌についで第2番目に高く,女性では大腸癌,肺癌,膵癌についで第4位である.

 世界のなかでもわが国は胃癌の多発国であり,胃癌を早期に発見するための画像診断法(X線・内視鏡)や治療法が世界に先駆けて開発され,胃癌の死亡率は減少傾向である.すなわち,画像診断により胃癌を早期に発見し治療すれば,胃癌で死亡することは少ない.

▼病態

胃癌の発生とリスク因子

 胃癌の発生にかかわる強いリスク因子は,H. pylori感染,胃粘膜萎縮,遺伝性素因である.なかでもH. pylori感染と胃癌の発症に関しては議論の余地がなく強い相関がわかっており,International Agency for Research on Cancer(IARC)でもGroup 1の発癌因子として挙げられている.

‍ H. pyloriは,1983年にオーストラリアの病理学者Warrenと内科医Marshallにより報告された.その後のさまざまな疫学的研究や動物実験から,幼少期に

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