疾患を疑うポイント
●胃癌についで頻度が高い胃悪性腫瘍.
●胃癌との鑑別が重要であり,明瞭な病変境界や潰瘍辺縁の不整さを欠く非上皮性腫瘍の特徴を認識することが重要.
学びのポイント
●組織型ではMALTリンパ腫と,DLBCLの頻度が高い.
●治療法は多岐にわたり,適切な組織診断と病期診断を行ったうえで決定する.
▼定義
胃に発生するリンパ増殖性疾患であり,胃原発リンパ腫と全身性リンパ腫の胃浸潤とがある.
▼病態
胃mucosa-associated lymphoid tissue(MALT)リンパ腫の約90%はHelicobacter pylori(H. pylori)感染胃炎を基盤に発生する.胃びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL)は胃MALTリンパ腫からの形質転換,H. pylori感染胃粘膜からのde novo発生,他臓器や節性DLBCLの胃浸潤がある.
▼疫学
胃悪性腫瘍のなかでは3~10%と比較的まれではあるものの,節外性リンパ腫のなかでは30~40%を占め,最も頻度が高い.胃原発リンパ腫のなかでは,MALTリンパ腫が40~50%,DLBCLが30~40%を占める.このほかT細胞リンパ腫や濾胞性リンパ腫などが数%ずつみられる.
▼分類・診断
組織分類,肉眼分類,病期分類が重要である.
診断に有用な特異的な症状はなく,心窩部痛などの精査や,スクリーニング目的の上部消化管内視鏡で発見されることが多い.
➊病理組織分類
造血およびリンパ系腫瘍のWHO分類に従う(改訂第4版,2016年).組織診断にはHE染色に加え,免疫組織化学染色が必須である.MALTリンパ腫,DLBCLのほか,T細胞リンパ腫,濾胞性リンパ腫,マントル細胞リンパ腫,Burkitt(バーキット)リンパ腫などがみられる.診断困難例では,Gバンド解析や蛍光in