▼定義
広義には,虚血性大腸炎とは主幹動脈に血管閉塞を伴わない可逆性の大腸虚血性病変の総称とされ,明らかな原因の有無から特発性と続発性に分類されるが,一般には特発性を虚血性大腸炎と呼称する.可逆性で特発性であることが疾患概念である.
▼病態
血管側因子(動脈硬化性疾患や循環不全など)と腸管側因子(腸管内圧の上昇や腸管蠕動の亢進など)が複雑に関連して腸管壁の微小循環障害が生じ腸炎が発症する.腸管側因子が主因と考えられている.
▼疫学
50歳以上の中高齢者に多いが若年者にもみられる.血便の原因疾患として大腸憩室出血についで多い.慢性便秘症例が多く,既往に腹部手術歴を有する例が多い.
▼分類
臨床経過から,狭窄を形成することなく治癒する一過性型と管腔狭小化を伴う狭窄型に分類される.虚血性大腸炎の約90%が一過性型,約10%が狭窄型である.狭窄型は重症例に該当し,より高齢発症で血管側因子の関与が大きい.
▼診断
診断基準を表4-21図に示す.以下のように,症状から本症を疑い,内視鏡検査で確診する.
➊症状
突然の腹痛(しぶり腹)で発症し,その後,下痢をきたし,徐々に血便(血性下痢)に移行するのが典型的パターンである.腹痛には,悪心や冷汗を伴うことが多い.血便に先行する腹痛の存在が本症に特徴的であり,腹痛を伴わない無痛性の血便を特徴とする大腸憩室出血との鑑別に重要である.
本症は下行結腸などの左側結腸に好発するため,腹部触診において左側腹部に圧痛を認めることが多い.
➋血液検査所見
白血球数の増加とCRPの上昇を認める.ともに重症度とほぼ相関する.
➌画像所見
本症は腸炎部に腸管浮腫を伴うため,腹部エコーやCTで左側結腸に腸管壁肥厚像を認める.注腸X線造影では病変範囲に一致して区域性の母指圧痕像を認める.
➍内視鏡所見と病理所見
大腸内視鏡検査では左側結腸に約10~30cmにわたる粘膜発赤・びらん