診療支援
治療

1 血管形成異常
angiodysplasia
矢野 智則
(自治医科大学准教授・消化器内科学)

▼定義

 血管形成異常(angiodysplasia)という用語は,定義が曖昧なまま多様な血管性病変に用いられるが,一般に静脈瘤と血管腫には用いられない.

▼病態

 加齢に伴う退行性変性による前毛細血管括約筋の機能不全や,粘膜微小循環における慢性的な低酸素状態の関与などによる後天的変化と推測されている.消化管出血や慢性鉄欠乏性貧血の原因となる.

▼疫学

 高齢者に多い傾向があり,背景疾患に肝・腎・心疾患をもつことが多い.

▼分類

 病理組織学的には以下の3つに分類される.

静脈・毛細血管の特徴をもつ病変(angioectasia)

 粘膜下層の正常静脈と,粘膜固有層の毛細血管の拡張からなる点状~斑状の赤い病変で,薄い血管壁からなる内弾性板をもたない異常血管が蛇行している.

動脈の特徴をもつ病変〔Dieulafoy(デュラフォワ)病変〕

 本来そこに存在しない異常に太い動脈が粘膜に近接して粘膜下層を蛇行し,粘膜の機械的圧迫などにより破綻して,微小な粘膜欠損から大出血する.

動脈と静脈の特徴をもつ病変(arteriovenous malformation:AVM)

 比較的大型の動脈と静脈の間に吻合または移行部を有する病変で,粘膜下層にとどまらず漿膜面まで達する比較的大きな病変である.

▼診断

‍ 出血から早いタイミングでの内視鏡検査が望ましい.自然止血後の検査では,病変の同定や,出血の責任病変かどうかの判断が困難な場合がある.

▼治療

 病変の多くは小さく,内視鏡治療が可能である.angioectasiaは電気焼灼術,Dieulafoy病変は止血クリップで治療する.AVMは,小さな病変であれば内視鏡治療できる場合もあるが,大きな病変では外科的切除や腹部血管造影下での塞栓術が選択される.

▼予後

 同時多発,異時多発する場合があり,特に背景疾患をもつ例では慎重に経過観察する.再出血時には内視鏡治療を繰り返すこ

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