疾患を疑うポイント
●肛門疾患のなかで最も頻度が高い.青壮年に多発する.まれに若年層にも発生する.
●肛門からの出血(鮮血),脱出,疼痛で痔核を疑い,肛門鏡を用いた肛門部の視診で診断する.
▼定義
内痔核と外痔核に分けられる.内痔核は,歯状線より上方の(直腸)粘膜下に存在する上直腸静脈叢が発達したもので,外痔核は歯状線より下方に存在する下直腸静脈叢が発達したもの.慢性的に経過し,これらの静脈叢が拡張してそれぞれ内外痔核となり,脱出をきたした状態を脱肛と称する.
▼病態
生来,上直腸静脈叢は歯状線より口側の直腸粘膜下に存在し,加齢とともに膨らむ.下直腸静脈叢は肛門縁に輪状に存在する.内痔核は粘膜,外痔核は肛門上皮および皮膚によって覆われている.痔核発生説には,①静脈瘤説,②血管増生説,③粘膜滑脱説,④結合組織破壊説がある.痔核の発生にはこれらの要因が複合し加味していると考えられている.内痔核と外痔核が一緒になり,内外痔核となる場合がある.大きくなると外方に脱出してくるようになり,脱肛とよばれる.排便障害や便秘で悪化する.女性の場合,妊娠・出産によっても悪化する.
▼疫学
肛門の痛みや出血を主訴とする患者のなかで,痔核は最も多い肛門疾患である.外来患者の男女比は55:45とほぼ同比である.多くは青年期に発生し,成人で進行していく.
▼分類
痔核は脱出の程度によって,Ⅰ~Ⅳ度に分類される〔Goligher(ゴリガー)の分類〕.
●Ⅰ度:排便時に出てこない.
●Ⅱ度:排便時に出てくるが,自然に元に戻る.
●Ⅲ度:排便時に脱出して自然に戻らず,指を用いて還納する.
●Ⅳ度:常に脱出している.
簡単な分類であるが,治療法の目安になる.Ⅰ度は保存療法,Ⅱ度は外来処置,Ⅲ・Ⅳ度は手術療法と大まかに分けられる.
▼診断
肛門疾患の症状は,出血,脱出,疼痛,硬結,腫脹などの組み合わせである.病歴と症状を詳しく聴取す