診療支援
治療

1 裂肛
anal fissure
野崎 良一
(大腸肛門病センター高野病院・副院長)

疾患を疑うポイント

●痔核,痔瘻と並んで三大肛門疾患の1つ.若い女性に多い.

●最大の症状は肛門痛.痛みの程度が強く,排便後も続くのが特徴で,数時間,ひどい場合は一日中痛みが続く.出血は少量の鮮血で,狭窄感を伴い,便が細くなる.

▼定義

 肛門上皮に生じた創である.肛門が括約筋で閉ざされていることから便が通る際に抵抗があり,このため生じた創が難治創になる.

▼病態

 裂肛の発生は,肛門上皮が薄いこと,肛門が括約筋で締められていること,しばしばさまざまな肛門病変が併存すること,下痢,便秘などの便通異常などに起因する.炎症性腸疾患であるCrohn(クローン)病や潰瘍性大腸炎,性病などの特殊な疾患に伴うものもある.

 また,裂肛は病悩期間によって,急性,亜急性,慢性に分けられ,それぞれ保存療法,外来処置,手術療法に対応する.

▼疫学

 肛門の痛みや出血を主訴とする外来患者の約10%を占め,男女比は42:58で女性に多い.理由は便秘傾向,肛門上皮が脆弱であることなどである.年齢は乳児から老年まで広く分布するが,20歳代をピークに減少する.

▼診断

 問診では肛門痛と便通との関係,強さ,持続時間,便通状態,便の性状などについて聴取する.肛門外からの視診では皮膚のたるみであるスキンタグ(見張りイボ)が慢性期にみられる.指診では,肛門のスパスムと狭窄を確認する.肛門鏡検査はリラックスしてもらいゆっくりと行う.無理ならば小児用の肛門鏡を使う.慢性期では,肛門ポリープ,裂肛,スキンタグ(裂肛の三徴)を認める(図4-77)

▼治療

 治療のベースとして,肛門の衛生,便通の調整を行う.便通や便の硬さを正常に保つためには刺激物を避け,食物繊維の多い食事療法や生活療法を行う.薬物療法として,便が硬い場合は酸化マグネシウムなどの緩下剤を用い,センナ系統の刺激性下剤は避ける.また,坐薬・軟膏で局所の循環改善,消炎作用,創

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