診療支援
治療

1 単純性イレウス
obturation ileus
竹島 史直
(長崎県五島中央病院・院長)

▼定義

 イレウスとは腸管内容物の肛門側への通過障害.腸管の器質的な狭窄や閉塞により生じる機械的イレウスと器質的障害を伴わない機能的イレウスとに大別される.単純性イレウスは,機械的イレウスのなかで腸管内腔が閉塞され血行障害を伴わないものであり,一方腸管内腔の閉塞に続き血行障害を伴うものを絞扼性イレウスという.

▼病態

 腸管の先天性閉塞,器質的変化(腫瘍,炎症,外傷,術後癒着など),腸管内異物(胆石,宿便,寄生虫など),腸管壁外性圧迫などを原因として生じる.閉塞部より口側の腸管は,通過障害のため拡張し,嘔吐をきたす.さらに腸液の再吸収障害による腸管内への水分の貯留が生じる.体外への喪失や吸収障害により脱水や電解質平衡異常をきたしやすい.拡張した腸管内では細菌の異常増殖が起こり,bacterial translocationを合併することもある.

▼疫学

 イレウスの90%以上は単純性イレウスであり,そのなかでも手術後の癒着性イレウスが最も多い.

▼診断

症状

 腹痛,悪心,嘔吐,腹部膨満,排ガス・排便の停止.手術の既往,食事内容は必ず確認する.

理学所見

 腹部の膨隆,腸雑音の亢進,鼓音などを認める.

画像検査

1)腹部単純X線検査

 多量の小腸ガス像のほか立位撮影での鏡面像(niveau:ニボー)が認められる.

2)腹部超音波検査

 keyboard sign〔小腸Kerckring(ケルクリング)皺襞がピアノ鍵盤様にみえる所見〕やto-and-fro movement(拡張した腸管を内容物が往復する所見)が認められる.

3)腹部CT検査

 閉塞した口側の腸管の拡張や浮腫が認められる.腸管径の急激な変化をきたす部位を同定することで閉塞の部位や原因を推定することが可能となる.

▼治療

保存的治療

 絶飲食としてイレウス管を挿入し腸管の安静・減圧をはかる.軽症の場合は,経鼻胃管の留置だけで改善する場合もある

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